[最終更新日:2023年3月20日]
オンラインカジノの利用はグレーゾーンと言われます。その契機となったのが「スマートライブカジノ事件」です。その経緯をみてみましょう。
スマートライブカジノ事件の概要
スマートライブカジノ事件は、自宅でオンラインカジノを利用していた3人が逮捕された事件です。
2016年3月10日に「スマートライブカジノ」を自宅で利用していた3人が京都府警に逮捕されました。容疑は「単純賭博罪」であり、国内のオンカジ利用者が逮捕された初めての事件です。
この事件のポイントは違法は「インカジ」を利用していたわけではなく、ひとり自宅でゲームを楽しんでいたということです。つまりこれは、ほかのユーザーも逮捕される可能性につながる事件ということになります。
逮捕に至った経緯
スマートライブカジノを利用していたユーザーはほかにも大勢いたはずですが、なぜ3人が逮捕されたのかが疑問です。
逮捕に至った経緯は次のようになります。まず警察はブログやSNSなどから3人のプレイ状況とそのIDを特定し、次にスマートライブカジノにアクセスしてそのIDを確認しました。そして実際にお金を賭けていることを確認したうえで逮捕に至っています。
スマートライブカジノの違法性は?
スマートライブカジノそのものは海外の会社が運営しており、日本の賭博罪が適用されません。そしてスマートライブカジノそのものに違法性がないことから、3人は違法行為をしていた認識はなかったと供述していたそうです。
ただしスマートライブカジノが日本時間で夕方から深夜にかけてライブカジノのテーブルをオープンしていたこと、さらに警察がサイトにアクセスしたところ日本語でチャットのやり取りがされていたこと、ライブカジノディーラーが日本人であった事などを逮捕に至る理由としています。
逮捕されたあとの経緯
3人は逮捕されたあとに検察から「略式起訴」を求められました。
「略式起訴」とは?
略式起訴は検察官が裁判所に対して、正式な裁判手続きをせずに書面の審理で罰金もしくは科料の刑罰を言い渡すことです。
裁判を行うとなれば数ヶ月かかることがあるため、逮捕された者としてはすぐに釈放されるメリットがあります。ただし有罪の判断を受け入れることで前科がつきます。
2人は略式起訴を受け入れる
逮捕された3人のうち2人は略式起訴を受け入れました。そして10万円から20万円の罰金を支払って釈放されています。もちろん、前科は付きました。
もし略式起訴を受け入れずに罪を認めない場合には、まず最大で72時間は拘束されます。そのあと留置所に最大で20日間は勾留されることになります。
そして逮捕後23日以内に起訴か不起訴の判定があり、起訴されれば刑事裁判を受けて有罪判決を受ける可能性は高くなります。
単純賭博罪の刑罰について
単純賭博罪は常習性がない賭博行為に対して適用されるものです。有罪となれば50万円以下の罰金または科料が科されます。科料とは1,000円以上1万円未満の罰金のことです。
懲役刑は規定されていないので、罰金を支払えばそのまま釈放されます。また前科が付いても警察に照会をかけて調べられることはありません。ただし職業によっては、前科が付くと就職できないことがあります。
残りの1人はどうしたのか?
気になるのは略式起訴を受け入れなかった1人です。実はこの逮捕を不服として、裁判で争うことを選択しました。そして弁護士を手配し控訴したところ、不起訴(無罪)となったのです。
1人に対しては無罪となりましたが、略式起訴を受け入れた2人の前科は取り消されることはありません。つまり有罪のままということになります。
スマートライブカジノ事件で1人が不起訴となった理由
スマートライブカジノ事件で警察が逮捕したことには、それなりの理由があります。しかし控訴したことで無罪となったのはなぜでしょうか。
弁護士による意見書の内容が認められる
控訴するにあたり、担当の弁護士は検察に対して意見書を提出しました。その内容を受けて検察側は、有罪とすることは難しいと判断したようです。
そしてその意見書の内容は、担当した弁護士がブログにより公表しています。
無罪につながった意見書の内容
意見書には次のようなことが書かれていました。
- 賭博罪は胴元に対して適用されるもので、その利用者は付随して罪を問われるにすぎない
- スマートライブカジノは海外でライセンスを取得しており、日本の賭博罪を適用することはできない
- 以上の2点により利用者のみを有罪とすることはできない
スマートライブカジノ事件で考えたいこと
スマートライブカジノ事件で注目されたのは、逮捕されたにも関わらず無罪となり、その内容がオンラインカジノの利用者のみに賭博罪を適用することは難しいと判断されたことです。
オンラインカジノでお金を賭けてゲームをするのは賭博行為に変わりありません。しかし胴元が海外にあるという理由で、利用者に賭博罪を適用するのは「難しい」という認識が広まったことになります。
その結果、オンラインカジノは「合法ではないが違法でもない」グレーゾーンにあると認識されるようになったのです。
しかし海外で合法的に運営しているオンカジの利用が合法であるというわけではありません。日本人に人気があるベラジョンカジノは違法なのか?とニュース記事でも取り上げられ、問題提議されているのを見た事がある人も多いでしょう。また2022年6月に、岸田首相が国会で「オンラインカジノは違法」「規制が必要」と発言し、今後グレーゾーンではなくなる可能性もありますので、ニュースには注目しておきましょう。
少なくともスマートライブカジノ事件を参考に、自身のユーザーIDが特定されるような行為は控えたほうがよいことがわかります。